肌の印象を左右するのは、実は目に見えない“角質の状態”です。どんなに丁寧にスキンケアをしても、古い角質が肌表面に残っていると、くすみやごわつきの原因となり、せっかくの美容成分も浸透しにくくなってしまいます。
そこで今、注目されているのが「AHA(フルーツ酸)」です。自然由来の酸でありながら、やさしく古い角質に働きかけ、肌本来の美しさを引き出してくれる成分として、多くのスキンケア製品に取り入れられています。
この記事は、化粧品販売を手がける株式会社ドクターサニーが執筆しました。長年にわたりお客様のお肌と向き合ってきた経験と、信頼できる専門情報に基づき、毎日のスキンケアに役立つ知識をわかりやすくお伝えしています。
AHAの基本情報
AHAは「アルファヒドロキシ酸(Alpha Hydroxy Acid)」の略称で、フルーツや乳製品、サトウキビなど自然由来の原料から得られる酸の総称です。別名「フルーツ酸」とも呼ばれ、スキンケアの分野では古くから注目されてきました。
公益社団法人日本皮膚科学会の「ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)」によると、最も多く使用される AHA 成分のグリコール酸は、「顔面に塗布する場合、pH3以上で濃度10%以下であれば、ほとんど反応性(副作用)は認められない」とされています。日本皮膚科学会
AHAにはいくつか種類があり、代表的なものにはグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などが含まれます。分子サイズの違いにより、浸透スピードやマイルドさに差があります。たとえば、グリコール酸は分子が小さく角質層への浸透が早いのに対し、乳酸はやや大きめで保湿性にも優れているとされます。
また、「美的」に掲載された解説によると、AHAは「酸によって角質をやわらかくし、余分な角質をはがれやすい状態に」することで、毛穴の詰まりを改善し、ニキビ予防や肌のくすみ改善につながる、とされています。美的計画
いずれにしても、AHAの大きな特徴は「水溶性で、やさしく古い角質を緩めて取り除く」点です。物理的なスクラブとは異なり、余分な角質だけに働くため、肌への負担を抑えながら透明感やなめらかさを取り戻す手助けをしてくれます。
AHAの働き・効果
古い角質をオフするだけではない、AHAの“内側から肌を変える力”。その効果とメカニズムを見ていきましょう。
古い角質の除去とターンオーバーの促進
AHA(アルファヒドロキシ酸)は角質層の細胞同士をつなぐ“デスモソーム”という構造をゆるめて、古くなった角質を穏やかに落とす「ケミカルピーリング」作用があります。この作用によって、肌の表面がなめらかになり、くすみが改善されやすくなるのです。
実際、「Mode of action of glycolic acid on human stratum corneum」という研究では、4%グリコール酸を使って2~5%の濃度で毎日塗布した結果、角質細胞の結合性が部分的に緩み、角質層の一番上の層(stratum disjunctum)でデスモソームの分解が促進されたことが確認されました。バリア機能(皮膚の水分保持力や外部刺激に対する防御力)は変わらず保たれたという点も重要です。 PubMed
コラーゲン生成・肌のはりと若返り
ターンオーバーの促進だけでなく、AHAには肌の真皮にも働きかける力があります。特にグリコール酸は、コラーゲン生成を増加させ、皮膚の厚みやハリを改善する効果が確認されています。
- ある研究「Increased in vivo collagen synthesis and in vitro cell proliferative effect of glycolic acid」では、MA(マリス酸)など他のAHAと比較して、グリコール酸処理では細胞内でのコラーゲン産生が有意に高かったと報告されています。 PubMed
- また「Glycolic acid adjusted to pH 4 stimulates collagen production…」の研究では、8〜25%の濃度のグリコール酸をpH4に調整して使用したところ、濃度依存で角質除去作用があり、コラーゲン量もすべての濃度で増加したとされています。刺激性(炎症マーカーの上昇)は認められなかったということで、「やさしく若返り」が可能なことが示されています。 PMC
色ムラ・くすみ・紫外線ダメージの改善
AHAはメラニンやくすみによる色ムラにもアプローチできます。特に光老化(photoaging)した肌を対象とした研究で、「エピダーミス(表皮)および真皮(dermis)のコラーゲン密度の改善」「表皮の厚みの増加」「エラスチン繊維の質の向上」が観察されました。これにより、しわやたるみ、全体的な肌の質感が改善するという結果が出ています。 PubMed+1